「陶磁器って、陶器と何が違うの?」と疑問に思ったことはありませんか?お店で食器を選ぶとき、「陶器」「磁器」「陶磁器」という言葉が並んでいて、どれがどれだかわからなくなることもありますよね。
実は、陶磁器とは「陶器と磁器をまとめた呼び方」のことです。どちらも粘土を焼いて作るという点では同じですが、原料や焼き方、仕上がりの質感がまったく異なります。
この記事では、陶磁器の基本的な意味から、歴史・種類・産地・選び方まで、できるだけわかりやすくまとめました。読み終わる頃には、器選びがもっと楽しくなるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
陶磁器とは?まずは基本の意味を押さえよう
陶磁器とは、粘土などを原料として形を作り、高温の窯(かま)で焼き固めた焼き物の総称です。私たちが毎日使っている茶碗・皿・マグカップなども、ほとんどが陶磁器に該当します。
「陶磁器」という言葉は、「陶器」と「磁器」という2種類の焼き物をあわせた呼び方です。ざっくりいうと、土っぽくてざらっとした質感のものが「陶器」、白くてツルツルしたものが「磁器」です。どちらも日常的によく使われています。
また、英語では「ceramics(セラミックス)」と呼ばれます。セラミックスというと工業製品のイメージもありますが、食器や花器などの生活道具を指す場合は「陶磁器」と訳されることがほとんどです。要するに、焼き物全般を広くカバーする言葉が「陶磁器」だと覚えておけば問題ありません。
なお、陶磁器には「炻器(せっき)」という第3の種類もあります。陶器よりも高温で焼かれ、水を吸いにくいという特徴があります。備前焼や常滑焼がこれにあたります。このように、陶磁器はひとくくりに語れないほど多様な種類があるのが面白いところです。
陶磁器の歴史|いつ、どこで生まれたの?

「陶磁器」の歴史はとても古く、人類が「土を火で焼くと固くなる」ことに気づいたことから始まりました。現在確認されている世界最古の陶器は、チェコで発見された約2万6000年前の土偶とされており、食器としての陶器は約1万年前から使われていたといわれています。
日本では、縄文時代(約1万6000年前)に作られた縄文土器が、世界最古レベルの土器のひとつとして知られています。当時の人々は食べ物を煮炊きするために土器を使っており、生活に欠かせない道具でした。その後、弥生土器・須恵器(すえき)へと発展し、平安・鎌倉時代には各地に窯が生まれ始めます。
磁器は中国から日本へ伝わった
「磁器(白くてツルツルした焼き物)」の発祥は中国です。唐の時代(7〜10世紀)にはすでに高品質な白磁・青磁が作られており、後に「景徳鎮(けいとくちん)」という地域が世界最大の磁器産地として発展しました。景徳鎮の磁器は、ヨーロッパの王族にも珍重されるほど高い評価を受けていました。
日本に磁器の技術が伝わったのは17世紀初頭のことです。朝鮮人陶工・李参平(りさんぺい)が佐賀県の有田で磁器の原料となる石を発見し、日本で初めて磁器を焼くことに成功しました。これが「有田焼」の始まりで、その後ヨーロッパへも輸出され世界的に有名になります。
江戸時代に花開いた日本の陶磁器文化
江戸時代になると、各藩が産業として陶磁器の生産を奨励したため、全国各地に特色ある産地が誕生しました。有田焼・九谷焼・美濃焼・信楽焼など、今でも私たちに親しまれている焼き物の多くは、この時代に基礎が築かれています。現代の日本の陶磁器文化は、江戸時代の繁栄を土台にしているといっても過言ではありません。
陶器と磁器の違いは?陶磁器の種類をわかりやすく比較
陶磁器の中でも特に混同されやすいのが「陶器」と「磁器」です。見た目が似ているものもありますが、原料・焼成温度・使い心地などがかなり違います。それぞれの特徴を整理してみましょう。
一目でわかる!陶器と磁器の違い一覧
| 項目 | 陶器 | 磁器 |
|---|---|---|
| 主な原料 | 陶土(粘土) | 陶石・長石・珪石 |
| 焼成温度 | 約800〜1250℃ | 約1250〜1400℃ |
| 表面の質感 | ざらっとしている | ツルツルしている |
| 水を吸うか | 吸う(吸水性あり) | ほとんど吸わない |
| 光を通すか | 通さない | 薄いと透ける |
| 重さ | やや重い | 比較的軽め |
| 代表的な産地 | 信楽焼・益子焼 | 有田焼・九谷焼 |
簡単にまとめると、陶器は「土の温かみ」、磁器は「洗練された清潔感」がそれぞれの魅力です。陶器は保温性が高く、冷めにくいのでお茶やスープに向いています。磁器は汚れが染み込みにくいので、毎日洗う食器として使いやすいという利点があります。
「どちらが良い」という話ではなく、シーンや料理に合わせて使い分けるのが陶磁器を楽しむコツです。和食には陶器、洋食や中華には磁器、という組み合わせもよく見られます。
陶磁器の特徴|素材・質感・使い勝手を詳しく解説
陶磁器の大きな特徴のひとつは、同じ素材でも釉薬(ゆうやく)や焼き方によってまったく異なる表情が生まれることです。釉薬とは、器の表面にかけるガラス質のコーティングのようなもので、これによって色・ツヤ・質感が変わります。
たとえば、同じ陶土を使っていても、釉薬の色や厚さ、窯の温度によって仕上がりは千差万別。職人の技や窯の個性によって、世界に一点しかない器が生まれることもあります。これが、陶磁器が長年にわたって工芸品として愛され続ける理由のひとつです。
陶磁器を使うメリット
- 保温・保冷性が高い:熱が伝わりにくいので、飲み物や料理の温度が長持ちする
- 耐久性がある:割れなければ何十年でも使い続けられる
- デザインが豊富:シンプルなものから華やかな絵付けのものまで、幅が広い
- 食卓を豊かにする:器ひとつで料理の見栄えがぐっと上がる
陶磁器のデメリット・注意点
- 割れやすい:落としたり強くぶつけたりすると欠けや割れが起きやすい
- 陶器は汚れが染み込みやすい:使い始めに「目止め」という下処理が必要な場合がある
- 電子レンジ・食洗機に使えないものもある:金彩・銀彩が施されたものは特に注意が必要
デメリットはありますが、正しく使えば一生モノになる器が多いのも陶磁器の魅力です。少し手間をかけてお手入れする価値は十分にあります。
陶磁器はどうやって作られる?製造工程をわかりやすく紹介
陶磁器がどうやって作られるか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。実はシンプルな工程でできていますが、それぞれのステップにプロの技が詰まっています。
陶磁器ができるまでの流れ
- 土の準備:粘土をよくこねて空気を抜き、均一な状態にする。これをおこたると焼いたときにひびが入る
- 成形:ろくろ・手びねり・型など好みの方法で形を作る
- 乾燥:成形した器をゆっくり乾燥させる。急ぐと割れてしまうのでここは時間をかける
- 素焼き:約800℃で一度焼いて強度を上げる
- 施釉(せゆう):釉薬を器にかけて、色や質感を加える
- 本焼き:1200〜1400℃の高温で本焼きして完成
成形の方法によって器の雰囲気がガラッと変わります。ろくろで作ると均整のとれた丸い形になり、手びねりだと少しいびつな手作り感が出ます。型を使えば同じ形を大量に作ることができます。
また、本焼きのあとに絵の具で模様を描いて再度焼く「上絵付け(うわえつけ)」という技法もあります。有田焼や九谷焼の華やかな絵柄は、この方法によるものです。工程ひとつひとつに職人の知識と経験が生かされており、それが陶磁器の奥深さにつながっています。
日本の陶磁器の産地|有名な焼き物とその特徴
日本には個性豊かな陶磁器の産地が全国各地にあります。産地ごとに使う土・釉薬・デザインが違うので、同じ「焼き物」でも印象がまったく異なります。代表的な産地をざっくりと紹介します。
知っておきたい日本の主な焼き物
- 有田焼(佐賀県):日本初の磁器産地。白地に青や赤の繊細な絵付けが美しく、海外でも人気が高い
- 九谷焼(石川県):赤・緑・黄・紫・紺の「九谷五彩」と呼ばれる鮮やかな色使いが特徴の磁器
- 信楽焼(滋賀県):粗めの土と自然な焼き色が魅力の陶器。たぬきの置物でもおなじみ
- 益子焼(栃木県):どっしりした厚みと素朴な温かみが特徴の陶器。民芸品として親しまれている
- 美濃焼(岐阜県):国内シェアNo.1の産地。志野・黄瀬戸・織部など多彩なスタイルを持つ
- 清水焼(京都府):京都の伝統工芸。繊細で上品なデザインが多く、贈り物としても人気
- 備前焼(岡山県):釉薬を使わず、土と炎だけで仕上げる炻器。素朴で力強い風合いが特徴
産地を知ることで、器選びの楽しさが一気に広がります。同じ白い磁器でも、有田焼と九谷焼では雰囲気がまったく違います。気になる産地を見つけたら、地域の窯元を訪れたり、陶器市に行ってみたりするのもおすすめです。
近年はオンラインショップでも各地の焼き物が手軽に購入できるようになっています。「産地から選ぶ」という楽しみ方は、器を単なる道具ではなく、文化や物語を持ったものとして楽しむ入り口になります。
陶磁器の選び方とお手入れ方法|長く使うコツを伝授
せっかく良い器を買っても、選び方やお手入れを間違えると使いにくかったり、すぐ傷んでしまったりすることがあります。ここでは、失敗しない選び方と、長持ちさせるためのお手入れのポイントをお伝えします。
用途に合わせた選び方のポイント
- 毎日使うなら磁器がおすすめ:汚れが染み込みにくく、洗いやすい。電子レンジ・食洗機対応のものも多い
- 和食・温かみのある食卓には陶器:保温性が高く、料理が冷めにくい。土の風合いが食卓に温かさを加えてくれる
- ギフトには産地や作家物を:産地や作り手のストーリーがあると、もらった人も喜びやすい
- 子ども用には軽くて丈夫な磁器を:欠けにくく、清潔に保ちやすい
陶磁器を長持ちさせるお手入れの基本
陶器を初めて使う前には「目止め(めどめ)」をするのがおすすめです。目止めとは、米のとぎ汁や薄めた片栗粉水で器を煮ることで、土の細かい穴をふさぐ処理のこと。これをするだけで、汚れやにおいが染み込みにくくなります。
- 使用後はなるべく早めに洗い、しっかり乾かしてから片付ける
- 陶器は長時間水に漬けおきしない
- 金彩・銀彩が施されたものは電子レンジ・食洗機はNG
- 重ねて収納するときは、間に布や紙を挟むと傷つきにくい
少し手間に感じるかもしれませんが、丁寧に使えば10年・20年と使い続けられるのが陶磁器の大きな魅力です。使い込むほど味わいが増す「育てる器」として、特に陶器は長年愛用するのに向いています。
陶磁器の魅力と現代での楽しみ方
陶磁器は古くから私たちの生活に寄り添ってきましたが、今の時代にもその魅力はまったく色あせていません。むしろ、「手仕事のぬくもり」や「丁寧な暮らし」への関心が高まっている現代だからこそ、陶磁器が改めて注目を集めています。
たとえば、カフェや飲食店では産地にこだわった器が使われることが増えており、器そのものがお店の個性を表現する手段になっています。SNSでも「器のある暮らし」を発信する人が増え、器選びをひとつの楽しみとして取り入れるライフスタイルが広まっています。
まずは、日常使いの器をひとつ、お気に入りの陶磁器に変えてみるだけでも、毎日の食事が少し豊かになります。産地を訪ねて窯元を巡る旅に出てみるのも素敵です。陶磁器との付き合いに正解はありません。自分なりのスタイルで、焼き物の世界を楽しんでみてくださいね。


