招き猫は、日本を代表する縁起物のひとつとして、飲食店や小売店の店先をはじめ、家庭のリビングや玄関など、さまざまな場所に飾られています。あの愛らしいポーズと表情は、見るだけで思わず笑顔になってしまうほど親しみやすいものですが…実は招き猫には深い歴史と、知られざる意味やご利益が込められています。
「右手を上げているのと左手を上げているのでは、何が違うの?」
「色によって意味が変わるって本当?」
など、招き猫に関する疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?招き猫の由来をたどれば江戸時代にまでさかのぼり、その誕生には複数の興味深い伝説が残されています。
本記事では、招き猫の起源と歴史から、手の上げ方・色・素材の違いによるご利益の差異まで、招き猫に関するあらゆる情報をわかりやすく解説します!
招き猫の起源と歴史|いつ・どこで生まれたのか

招き猫がいつ頃から存在するようになったのか?その起源については諸説あります。一般的には江戸時代後期(19世紀前半)に誕生したとされており、現存する最古の文献資料としては、1852年(嘉永5年)の浮世絵師・歌川広重の作品の中に招き猫に似た意匠が確認されています。
また、1876年(明治9年)の文献には「招き猫」という言葉そのものが登場しており、明治時代には庶民の間で広く普及していたと考えられています。
東京・浅草の今戸焼が起源のひとつともとされています。今戸焼は江戸時代から続く素焼きの陶器で、招き猫はその代表的な商品として全国に流通しました。また、愛知県の常滑(とこなめ)は現在でも招き猫の一大産地として知られており、「常滑焼の招き猫」は国内生産量の約90%を占めるとも言われています。
時代が下るにつれて招き猫は商売繁盛のシンボルとして定着し、明治・大正・昭和と時代を経るごとにそのデザインや種類が多様化していきました。もともとは白い陶器製が主流でしたが、やがて色や形、大きさも豊富になり、現代では伝統的な陶器製から樹脂製・ガラス製・電動で手を動かすものまで、実に多彩なバリエーションが存在しています。
招き猫の文化は日本国内にとどまらず、現在では海外でも “Maneki-neko” として広く知られており、中華系のコミュニティやアジア系の飲食店など、世界各地で幸運を招くシンボルとして親しまれています。グローバルな縁起物として定着した招き猫は、まさに日本文化を代表するアイコンのひとつと言えるでしょう。
招き猫の伝説・言い伝え|有名な3つの発祥エピソード
招き猫の起源には、いくつかの有名な伝説が語り継がれています。どれが「本当の起源」かは定説がなく、地域によって異なる言い伝えが残っています。ここでは特に有名な3つのエピソードを紹介します。
招き猫の起源:豪徳寺の白猫伝説(東京・世田谷)
最もよく知られているのが、東京・世田谷にある豪徳寺にまつわる伝説です。
江戸時代、彦根藩主の井伊直孝が鷹狩りの帰りに豪徳寺の前を通りかかったとき、境内の白猫が手招きするように前足を上げました。不思議に思った直孝が猫に従って寺に立ち寄ると、突然激しい雷雨が降り出し、難を逃れることができたと言われています。
「猫が命を救った」というこの逸話が招き猫のモデルになったとされており、豪徳寺には現在も多数の招き猫が奉納されています。
招き猫の起源:今戸神社の発祥説(東京・浅草)
東京・浅草の今戸神社も招き猫発祥の地として名高い場所です。
今戸焼の産地であったこの地域で、老婆が生活に困り、愛猫を手放した後に夢の中で猫が「自分の姿を土人形にして売れば福が来る」と告げたという伝説が残っています。
この夢に従って老婆が今戸焼で猫の人形を作って売り出したところ大評判となり、これが招き猫の始まりとも伝えられています。
招き猫の起源:伏見稲荷・東京の芸者にまつわる説
そのほかにも、吉原の遊女が飼い猫の夢のお告げにより招き猫を作ったという説や、江戸の商家が店先に猫を置いたところ商売が繁盛したという説など、さまざまな言い伝えが存在します。
複数の伝説が各地に残っていること自体が、招き猫がいかに広く民間信仰に根付いていたかを物語っています。
招き猫の左手・右手の違いとご利益|どちらを選ぶべき?
招き猫を選ぶ際に最初に気になるのが、「手(前足)の上げ方の違い」ではないでしょうか。招き猫には右手を上げているもの、左手を上げているもの、両手を上げているものがあり、それぞれ招くご利益が異なるとされています。
右手上げ:お金・財運を招く
右手を上げている招き猫は、金運・財運を招くとされています。「右手でお金を招く」というイメージから、特に金銭的な豊かさや商売での利益拡大を願う方に向いているとされ、飲食店やお店のレジ周りに置かれていることが多いです。
左手上げ:人・客を招く
左手を上げている招き猫は、人や客を招くとされています。「左手でお客さんを招き入れる」というイメージで、新規顧客の獲得や人脈づくり、良縁を呼び込みたい場合に適していると言われています。商売を始めたばかりの方や、人との縁を大切にしたい方におすすめです。
両手上げ:欲張りはNG?実は賛否あり
両手を上げている招き猫は、金運と人運の両方を招くとされる一方で、
「両手を上げるのは降参のポーズ」
「欲張りすぎると何も得られない」
という否定的な見方もあります。ただし近年ではそのような迷信より「両方の幸運を呼び込む縁起物」として販売・購入されるケースが増えており、受け取り方は個人の考え方や地域の習慣によって異なります。
| 手の向き | ご利益 | おすすめの用途 |
|---|---|---|
| 右手上げ | 金運・財運 | お店のレジ・金庫の近く |
| 左手上げ | 人・客を招く | 玄関・入口付近 |
| 両手上げ | 金運+人運(諸説あり) | 開業祝い・贈り物など |
招き猫の色の意味とご利益一覧|何色を選ぶべきか

招き猫はその色によっても、招くご利益が異なると言われています。もともとは白が基本でしたが、現代では実にさまざまな色の招き猫が流通しており、目的や願いに合わせて選ぶことができます。
以下に、代表的な招き猫の色とその意味をまとめます。
| 色 | 意味・ご利益 |
|---|---|
| 白 | 幸福・開運・福を招く(最もオーソドックス) |
| 黒 | 魔除け・厄除け・悪運を払う |
| 金(ゴールド) | 金運アップ・財運上昇 |
| 赤 | 病除け・健康祈願・魔除け |
| ピンク | 恋愛運・良縁・縁結び |
| 黄色 | 金運・財運・商売繁盛 |
| 緑 | 学業成就・健康・家内安全 |
| 青・紺 | 仕事運・出世・勝負運 |
最も一般的なのは白い招き猫で、幅広い開運効果があるとされることから、どんな場所にも置きやすく人気があります。金色の招き猫は金運アップを直接的に願う場合に選ばれることが多く、特にビジネスシーンでの贈り物としても定番です。
黒い招き猫は「縁起が悪そう」というイメージを持たれることもありますが、実際には魔除け・厄除けの強い力を持つとされており、古くから守り神的な役割を担ってきました。インテリアとしてもスタイリッシュに飾れることから、近年では若い世代にも人気が高まっています。
招き猫の持ち物の意味|小判・鈴・よだれかけの意味とは
招き猫をよく観察すると、手(前足)以外にもさまざまなアイテムを身につけていることに気づきます。これらの持ち物にも、それぞれ意味が込められています。
小判(こばん)
多くの招き猫が手に持っているのが「小判」です。小判は江戸時代の金貨であり、招き猫が小判を持つことで金運・財運を引き寄せるという意味が強調されます。小判に「千万両」などの文字が入っているものも多く、より強力な財運招来を願う意図が込められています。
鈴(すず)
首元に鈴をつけている招き猫は非常に多く見られます。鈴の音は邪気を払うとされており、魔除けや厄除けの意味があります。また、音を立てることで福を呼び込むという意味合いもあり、招き猫に欠かせない装飾のひとつです。
よだれかけ・前掛け
赤いよだれかけ(前掛け)を着けている招き猫も多く存在します。これはもともと子どもの健康を祈る際に使われる赤い前掛けを模したもので、子どもの健康や魔除けを願う意味が込められています。また、赤色には邪気を払う力があるとも考えられています。
招き猫の正しい飾り方・置き場所|効果を高めるポイント

招き猫の効果を最大限に引き出すためには、飾る場所や向きにも気を配ることが大切です。縁起物である以上、置き方一つでその効果が変わるとも言われています。
玄関・入口に置く場合
玄関や店舗の入口に置く場合は、外に向けて(福を招き入れる方向に)置くのが基本です。猫が外に向かって手を招くような形で配置することで、外からの福・客・縁を引き込むとされています。左手上げの招き猫が特に効果的とされる場所です。
レジ・金庫の近くに置く場合
商売繁盛や金運アップを狙うなら、レジや金庫の近く、あるいはお金を管理する場所に右手上げ・金色の招き猫を置くのがおすすめです。お金が集まる場所に置くことで、さらなる財運を引き寄せるとされています。
置き場所の高さと清潔さ
招き猫は低い場所より、目線の高さかそれより少し上に飾ると良いとされています。また、縁起物である以上、ホコリや汚れが溜まっているのはNGです。定期的に清潔にして、大切に扱うことが招き猫の効果を持続させる上で最も重要なポイントと言えます。
置いてはいけない場所としては、トイレや水回り(湿気が多く不浄とされる場所)、直射日光が長時間当たる場所(色あせや劣化につながる)などが挙げられます。縁起物を大切にする気持ちが、ご利益を引き寄せる第一歩です。
招き猫の産地と種類|常滑・今戸・有田など地域ごとの特徴
招き猫は日本各地で作られており、産地によってデザインや特徴が異なります。代表的な産地を知ることで、招き猫選びの参考になるはずです。
常滑焼(愛知県)
愛知県常滑市は、日本最大の招き猫産地として知られています。国内で流通する招き猫の約90%が常滑産とも言われており、招き猫のまちとして「とこなめ招き猫通り」などの観光スポットも整備されています。常滑焼の招き猫は比較的ふっくらとした丸みのあるフォルムが特徴で、陶器ならではの温かみがあります。
今戸焼(東京都)
東京・浅草の今戸焼は招き猫発祥の地のひとつとされており、江戸時代から続く伝統的な素焼き陶器です。今戸焼の招き猫は素朴でシンプルなデザインが特徴で、現代では職人の数も減り、希少な存在となっています。
有田焼・九谷焼
佐賀県の有田焼や石川県の九谷焼でも招き猫が作られており、これらは磁器ならではの繊細な絵付けと美しい発色が特徴です。インテリアとしての観賞価値も高く、贈り物や記念品としても人気があります。
招き猫に関するよくある疑問Q&A

招き猫を飾る際によく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。招き猫を初めて購入する方や、より深く知りたい方はぜひ参考にしてください。
Q. 招き猫はいくつ飾っても良い?
招き猫は複数飾っても問題ありません。目的別に色や手の上げ方が異なる招き猫を組み合わせるのもひとつの楽しみ方です。ただし、飾り過ぎて雑然とした印象になるのは避けたほうが良いとされています。あくまで丁寧に扱うことが大切です。
Q. 古くなった招き猫はどうすれば良い?
欠けたり壊れたりした招き猫を捨てる際は、神社やお寺の「お焚き上げ(おたきあげ)」に持っていくのが一般的な方法です。感謝の気持ちを込めて処分することで、縁起物としての礼儀を尽くすことができます。壊れた縁起物はそのまま飾り続けず、きちんとお礼を伝えて手放すのがマナーとされています。
Q. 招き猫はプレゼントしても良い?
もちろん問題ありません。開業祝いや新居祝い、商売繁盛を願う贈り物として招き猫は非常に喜ばれます。相手の状況や願いに合わせて色や手の上げ方を選んであげると、より気持ちが伝わる贈り物になるでしょう。
Q. 招き猫のモデルになった猫の種類は?
招き猫のモデルは「三毛猫(みけねこ)」とされることが多く、白・黒・茶(オレンジ)の三色が混じった柄が伝統的なデザインです。三毛猫は日本では古くから縁起の良い猫とされており、特に雄の三毛猫は希少なため幸運をもたらすと信じられてきました。


